働きながら年金を受け取る――在職老齢年金の基準改定で何が変わる?

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■ 60歳以降も「働き続ける人」が増えている

近年は定年後も継続雇用などで、60歳以降も働き続ける方が増えています。それに伴い、「年金をもらいながら働く」ケースも一般的になってきました。そこで関係してくるのが、在職老齢年金の制度です。

厚生年金に加入しながら働く60歳以上の方が対象で、毎月の給与(賞与含む)と厚生年金の合計額が一定の基準を超えると、超えた分に応じて年金が減額される仕組みです。「稼ぎすぎると年金が削られる」制度とも言えます。


■ 51万円から65万円へ――何が変わったか

2026年4月から、この基準額が月51万円から65万円に引き上げられました。

具体的なイメージをつかむために、一例を挙げてみます。

Aさん(65歳)の場合 毎月の給与:40万円 厚生年金:25万円 合計:65万円

これまでの基準(51万円)では合計が基準を超えるため、年金の一部が減額されていました。
しかし新基準(65万円)では合計がちょうど基準内に収まり、年金を満額受け取れるようになります

月数万円の差が生じるケースも珍しくなく、年間にすると相当な金額になります。
特に、これまで「稼ぎすぎないように」と働き方を調整していた方にとっては、大きな制度変更です。


■ なぜ今、基準を引き上げたのか

背景にあるのは、高齢者の就労促進という国の方針です。

少子高齢化が進むなか、労働力不足は年々深刻になっています。
経験豊富な高齢者に、より長く、より積極的に働いてもらうことが社会的な課題となっています。

しかし従来の制度では、「稼ぐと年金が減る」という仕組みが高齢者の働き控えを招いていました。
「どうせ年金が減るなら、あまり稼がないようにしよう」という判断が合理的になってしまっていたのです。

基準額を65万円に引き上げることで、こうした「働き控え」を防ぎ、高齢者が収入を気にせず働ける環境を整えるねらいがあります。


■ 企業・経営者への影響

この改定は、従業員を雇う側にとっても無視できない変化です。

これまで「年金が減るから給与を抑えてほしい」と希望する高齢従業員への対応に悩んでいた企業も少なくありませんでした。新基準により、そうした調整の必要が減り、高齢従業員の雇用継続や処遇設計がしやすくなります

特に人手不足が続く中小企業にとっては、経験のある高齢人材をフルに活用できるチャンスとも言えます。
60代・70代の従業員の処遇を見直す良いタイミングです。


■ 注意点――減額されるのは老齢厚生年金のみ

ひとつ重要な点があります。在職老齢年金によって減額される可能性があるのは、老齢厚生年金の部分だけです。

国民年金から支給される老齢基礎年金は、いくら稼いでいても減額されません。「年金が減る」と聞くと、年金全体が削られるイメージを持たれがちですが、実際に影響を受けるのは厚生年金部分に限られます。

また、そもそも厚生年金に加入せず国民年金のみで働く自営業・フリーランスの方には、この減額の仕組み自体が関係ありません。

対象になるのは、会社員・パート(厚生年金加入)として働く60歳以上の方です。ご自身がどの年金を受け取っており、どの部分が対象になるのかを確認しておくことが大切です。


■ まとめ――60代の働き方を設計し直す好機

在職老齢年金の基準改定は、「年金をもらいながらどう働くか」という60代の働き方設計に直結します。

これまで年金減額を気にして働き方を抑えていた方は、改めてシミュレーションしてみる価値があります。給与と年金のバランス次第では、収入を大きく増やせる可能性があります。

なお、ひとつ見落とされがちな点として、70歳以降は厚生年金の被保険者ではなくなるため保険料負担はなくなりますが、在職老齢年金の仕組み自体は引き続き適用されます
「保険料を払っていないから年金は減らないはず」と誤解されがちですが、基準額を超える働き方をしていれば70歳以降も年金は減額されますので注意が必要です。

また企業の人事担当者にとっても、高齢従業員の処遇見直しや採用戦略を考える上で、この制度変更は重要な前提条件となります。

当事務所では、在職老齢年金の個別シミュレーションや、高齢者雇用に関する労務相談を承っております。お気軽にご相談ください。

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